私はこれまで左右が有線で接続されているイヤホンやヘッドホンしか使ったことがなかったのですが、最近は音切れが減るなど完全独立イヤホンの品質も上がっているそうで、試してみたいと考えていました。そんなとき、SOUNDPEATS様から同社の「Capsule3 Pro」をご提供いただける機会を得たので実際に試した正直なレビューをお届けします。
13年の歴史を持つイヤホン専門ブランド「SOUNDPEATS」
SOUNDPEATSは13年の歴史(本記事執筆時点)を持つイヤホン専門ブランドです。
主に完全独立型のイヤホンを取り扱っており、VGPという優秀なオーディオビジュアル製品を表彰するコンテストで毎年受賞製品を発売しています。
あまり聞かないメーカーだとただ安いだけの製品だと思われがちですが、SOUNDPEATSはしっかりとした歴史と実績を持っているメーカーなのです。
VGP2023で金賞を受賞した「Capsule3 Pro」
今回レビューをお届けするのはそんなSOUNDPEATSの最新製品である「Capsule3 Pro」です。
非常にコストパフォーマンスが高い製品であり、先述のVGP2023において金賞を受賞しています。
ハイレゾ対応コーデック「LDAC」とハイレゾ対応の周波数特性
Capsule3 Proの最大のこだわりはなんといっても音質です。
私の完全独立型のイヤホンの印象は音がいまいちというものでしたが、後述するとおり、決してそんなことはありませんでした。
音質向上のためにCapsule3 Proは2つの特徴を持っています。1つ目はハイレゾBluetoothコーデックである「LDAC」への対応:
Bluetooth接続のイヤホンは通信規格の制約および音切れ低減のために音楽データを圧縮したものを受信しています。圧縮の際には元々の音楽データが失われますので、音質の劣化が避けられません。
LDACは一般的に使われる「SBC」に比べて約3倍のデータを送信できる規格であり、高音質での音楽再生に欠かせないハイレゾにも対応しています。
なお、LDACの利用にはスマホなどの送信側がLDACに対応している必要がある店にご注意ください。
もう1つの特徴は優れた周波数特性:
イヤホンは最終的に音というアナログなものに変換する必要があり、いくらBluetooth接続規格が高音質でも音への変換がいまいちだと音質はよくありません。
Capsule3 Proは12mmのバイオセルロース振動板を搭載し、最大で40kHzという可聴域を超えた周波数の再生にも対応しています。
音楽の入口から出口までしっかりと音にこだわったイヤホンといえるでしょう。
43dBのハイブリッドアクティブノイズキャンセリング機能
完全独立型のイヤホンが活躍するのは主に屋外であり、屋外にはさまざまな音があふれています。
せっかく高音質で音楽を再生できても、外音によって邪魔されてしまっては音楽を十分楽しめません。
そこでCapsule3 Proには43dBものノイズ低減効果を持つハイブリッドアクティブノイズキャンセリング機能が搭載されています:
ノイズキャンセリング機能はON/OFFの切り替えができるほか、搭載されたマイクを使った「外音取り込みモード」も搭載されており、重要なアナウンスや人との会話を聞き逃しません。
また、ノイズキャンセリング機能搭載イヤホンのなかには風が当たると風切り音と呼ばれる不快な音が出るものがありますが、Capsule3 Proはマイクの搭載位置を最適化することで風切り音を大幅に低減しているとのことです。
遅延を減らす「ゲームモード」
Bluetooth接続のイヤホンは一般的に音の再生に遅延が発生します。
これはスマホなどの再生機器側で音楽データを圧縮し、無線データとして送受信し、圧縮された音楽データを元に戻すという手間が必要なためです。
音楽を聴く分には遅延が気になることはそれほどありませんが、音と映像が同期する必要があるゲームや動画では致命的な問題になり得ます。
そこでCapsule3 Proには「ゲームモード」と呼ばれる遅延を減らすモードが搭載されており、ゲームや動画でも快適に利用可能です。
どのような原理で遅延を減らしているのかについては触れられていませんが、おそらく音切れ防止のためにバッファするデータ量を減らすなどの工夫をおこなっているのでしょう。
実際に届いたCapsule3 Proをチェック
まずは実際に手に入れたCapsule3 Proの外観などをチェックしていきます。
高級感のあるイヤホン、「うどんが出ている」になりづらい
Capsule3 Proは黒をベースに、落ち着いた金色を使った高級感のあるデザインになっています:
完全独立型のイヤホンの代表格であるAirPodsの場合、真っ白な本体のために装着していると「耳からうどんが出ている」と揶揄されることがありますが、Capsule3 Proならそんな心配はありません。
イヤホンの重さは約5gと軽く、装着していてもまったく重いという感覚はありません。
IPX4の防水機能も備えており、突然雨が降ってきても安心です。
バッテリーを内蔵したケースが付属しており、イヤホン単体で約8時間の音楽再生時間を誇るほか、ケースを併用すれば約52時間の音楽再生が可能:
これだけ長ければ音楽再生のほか、リモートワーク時のWeb会議にも利用できます。
ケースの充電は1時間で完了しますので、外出先でもカフェなどで休んでいる間に充電できるでしょう。
充電ポートはもちろんUSB-Cです:
ケースはつや消しの黒色であり、指紋がつきづらく、滑り落としづらいです。
中低音が充実、なめらかな音でクラシックによく合う
肝心の音ですが、全体として中低音域が充実していると感じました。
安いイヤホンにありがちないわゆる「ドンシャリ」ではなく、落ち着いた音作りです。
高音がシャリシャリすると聞き疲れしやすいですが、じっくりと音楽を楽しめます。
また、バイオセルロース振動板の効果なのか、解像度を持ちながらなめらかな音であり、オールマイティにジャンルを選ばず音楽を楽しめるでしょう。
個人的にはクラシックによく合うと感じました。
アプリで一人ひとりにあわせた音質にAIが自動調節可能
面白いと感じたのが、AIを利用した音質の自動調節機能です。
人間の耳は一人ひとり聞こえ方が異なります。どの周波数帯域が聞こえやすく、どの周波数帯域が聞こえづらいかが異なり、同じイヤホンを使っても人によって音楽を楽しめるかどうかは異なるかもしれません。
そこでCapsule3 ProはSOUNDPEATSアプリから音の聞こえ方を測定し、一人ひとりにあわせた周波数特性に自動調節してくれます:
この調整にはAIが使われており、SOUNDPEATSが培って来たノウハウが存分に活かされているのでしょう。
私の測定結果はこんな感じでした:
高音が少し持ち上げられています。
もちろんここから手動で音を調整することも可能ですので、自分好みの音に追い込みやすいです。
低音ノイズがしっかりと抑制されるノイズキャンセリング機能
ノイズキャンセリング機能のテストのため、新幹線でCapsule3 Proを使ってみました。
新幹線は快適な乗り物といわれますが、モーター音や空調の音、線路の音、ほかの乗客の会話など意外とノイズ源が多いです。
実際に使ってみたところ、Capsule3 Proはかなりお買い得な製品だけに正直あまり期待していなかったのですが、期待以上に低音ノイズをしっかりと抑制してくれました。
43dBというノイズ抑制効果は伊達ではなく、新幹線のなかでイヤホンをつけたまま熟睡してしまったほどです。
一方、全周波数帯域に対してノイズキャンセリングが効いているわけではなく、高音域は低音域に比べるとノイズ抑制効果が弱いです。
ただ、電車やバス、空調の音など定在するノイズは低音が多く、高音はものが壊れるなど突発的に起こるアクシデントで発生しがちなので、ちょうどよいのではないでしょうか。
音切れは皆無
新幹線や電車といった、ほかの人の電波と干渉しがちな環境でCapsule3 Proを長時間利用しましたが、その間音切れは全く起きませんでした。
完全独立型のイヤホンというと電車のなかで音がよく途切れるという印象を持っていましたが、うれしい驚きです。
イヤホンの存在を意識せず、快適に音楽を楽しめます。
Capusle3 Proの気になる点
Capsule3 Proは非常にコストパフォーマンスが高いイヤホンだと感じましたが、欠点がないわけではありません。
イヤホンを収納する向きが逆
最も気になったのが、ケースに収納する際のイヤホンの向き:
こちらの写真のように、音が出る側が外側に向いてしまっています。
これの何がいまいちかというと、ケースからイヤホンを取り出し、耳に装着する前にイヤホンを180度回転させなくてはなりません。
完全独立型のイヤホンは外出先で付け外しすることが多く、ケースを持ちながらイヤホンを取り出す場面も良くあります。
そんなときに片手でケースを持ち、かつもう一方の手でイヤホンを回転させながら耳につけるのは意外と手間です。
ケースの充電残量がわかりづらい
イヤホン自体のバッテリー残量はアプリから確認できるのですが、ケースのバッテリー残量は本体のLED表示でしか確認できません。
これはイヤホンにしか通信機能がないためなのでしょうが、LEDで数字が表示されるわけではないので、LED表示とバッテリー残量の関係を覚えておかなくてはなりません。
さらに残量表示が3段階しかなく、細かい残量はわからないため、ケースはまめに充電したほうがよいかもしれません。
タッチ操作が覚えづらい
これはCapsule3 Proに限ったことではありませんが、完全独立型のイヤホンは操作面が小さく防水や小型化のためにボタンもないため、タッチ操作でさまざまな機能をまかなわなくてはなりません。
Capsule3 Proの場合、以下のような操作が存在します:
すべての操作はスマホ本体やアプリからおこなえるのですが、外出先ではやはりイヤホンから操作したいもの。
慣れてしまえば問題ないかもしれませんが、あまり直感的でないこれらの操作を覚えるのには時間がかかりそうです。
また、イヤホンが耳から抜けそうなときに押し込むとタッチ操作になってしまい、ボリュームが上下するのも最初は慣れませんでした。
タップ操作を無効にする機能があるので、すべてスマホなどの再生機器側で操作すると割り切ってもよいかもしれません。
間違いなくコストパフォーマンスが高い製品
いろいろと不満も述べましたが、SOUNDPEATSのCapsule3 Proは定価で8,000円台という価格以上の価値があるイヤホンだと感じました。
音質はオールマイティに音楽を楽しめる高いものですし、ノイズキャンセリング機能もただの飾りではなくしっかりと効きます。
イヤホン単体で約8時間、ケースと併用で52時間という再生時間も十分で、Web会議用のイヤホンマイクとしても活用できます。
イヤホンやヘッドホンの世界は上を見れば切りがありませんが、Capsule3 Proは多くの方にとって満足できる音質や機能を備えた高コスパ製品です。
完全独立型のイヤホンを探しているならぜひ候補に入れてください。
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