Amazonから新たに発売されるEcho Studioの特徴は「3Dミュージック」に対応する点です。これはどのような技術なのでしょうか?これまでの5.1chとか7.1chのサラウンドとは何が違うのでしょうか?
Echo Studioは3Dミュージック対応
先日のAmazonの発表会でひときわ目を引いたのがEcho Studioです。
気になるのは何といっても3Dミュージック対応という点です。Amazon Musicでも使えるようになるというこの新技術、音楽の聴き方を根本から変えるかもしれません。
スピーカーごとの音が記録されているに過ぎないサラウンド
まず、従来のサラウンドとは何かという点です。
従来の5.1chの7.1chとかのサラウンドは、その名が示す通り、音楽情報として6つとか8とか複数のスピーカーが出すべき音の情報が記録されています。
フロントスピーカーで出す音はこれ、レフトはこれ、リアはこれ、といった感じです。
この方法だと確かに後ろから音が聴こえたりもするのですが、程いいサラウンド間を味わうには人間がスピーカーに合わせる必要があります。
何しろ音としては各スピーカーが出すべき音しか記録されていないので、録音時に想定されている位置にスピーカーがないと元々のサラウンド間は得られません。
また、音楽を聴いている間、人間は動くことができません。顔の向きを変えれば当然ながらサラウンド間が失われます。
3Dゲームのように音を記録する3Dミュージック
そこで3Dミュージックでは音を音だけでなく位置と移動量(ベクトル)を記録しておきます。
これを再生するときはこれらの情報からスピーカーやヘッドホンが出すべき音を計算して発音します。
これは3Dゲームと同じようなことをやっています。2Dのゲームでは自分や敵がどこにいれば一意に決まっていればそれを表示するだけで問題ありません。3Dゲームの場合は自分が向いている方向や位置によって視界に映るものが変わり、それに応じてリアルタイムに計算する必要があります。
スピーカーの数や位置に依存しない
この方法の利点は、まず、スピーカーの数や位置に依存しないフォーマットであるという点です。
5.1chや7.1ch等の場合はスピーカーの数ありきで音楽情報が記録されており、それに合わない場合は適当にミックスダウンする必要があります。
3Dミュージックの場合は音楽情報としては音をだすものの位置や移動情報だけ記録されていますので、それをどう再生するかは再生機器側の構成にゆだねられます。
したがって、既存の構成に縛られることなく自由な構成ができます。
また、VRへの応用も可能で、上から音が聞こえるときにそちらをむけば前から聞こえるようにもできますし、自分が部屋のどこにいようが同じように音が聞こえるといった加工も可能です。
ちなみに、Amazon Musicで使われるSonyの3D Reality Audioの場合は最大13個のスピーカーが使われるそうですが、これらをEcho Studioは5個のスピーカーで実現するようです。
すでにMPEGで標準化済み
この3D Musicはローカルな規格というわけではなく、すでにMPEGで標準化済みです。
MPEG-H 3D Audioという企画で標準化されており、各社がこれに応じた音楽や再生機器をこれから提供していくことになります。
すでにAmazon Music, Desser, Qobuz, TIDALといったストリーミング音楽配信サービスが今後3Dミュージックを提供することが決まっているそうです。
リスナーにとっては「音楽に包み込まれる感覚が増す」
この3Dミュージック、リスナーにとってどう感じるかというと、音楽に包み込まれているような感覚が増すのだそうです。
この分野で期待できるのはクラシックのコンサートやロックのライブでしょうか。
観客の静けさやちょっとした音、あるいは熱狂がその場にいるかのように味わえるようになります。
まだまだ黎明期であり音楽のレコーディング方法やハードウェアとしてどう再生するかなど課題も多そうですが、今後の音楽を楽しむための環境としてハイレゾの次にきそうです。
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