Bluetooth用の高音質コーデックの代表格といえばQualcommのaptXです。これまでは48kHz/24-bit対応が最高でしたが、Snapdragon 865から96kHz/24-bitに対応するそうです。これで多くのハイレゾ音源がカバーできそうです。
4種類存在するaptX
aptX自体は割と昔からある高音質コーデックで、Qualcommが買収する前のCSRの時代からありました。
色々な要望に応えた結果、現在では4種類のaptXが併存しています:
- aptX: 最初のaptX。Bluetooth標準のSBCやアップル製品が採用しているAACに比べて高音質で低遅延といわれている。
- aptX HD: ハイレゾ品質対応のaptX。48kHz/24-bit相当の品質に対応。
- aptX LL: 低遅延(LL: Low Latency)に特化したaptX。aptXが70~80ミリ秒の遅延なのに対して約半分の40ミリ秒の遅延。
- aptX Adaptive: これ以外のaptXの転送レートが固定なのに対して、転送レートが可変であるaptX。通信状態の品質によって変えることにより切れない音楽伝送を実現する。
aptX AdaptiveにSnapdragon 865で96kHz/24-bitのハイレゾ対応を行う
今回発表されたのはSnapdragon 865を使用したスマホでaptX Adaptive使用時に96kHz/24-bit相当のハイレゾ音楽再生を可能にするというものです。
これまでのaptX Adaptiveでは転送ビットレートは280kbpsから420kbpsの間で可変でした。280kbpsはCD相当、420kbpsは48kHz/24-bit相当だそうです。
これにより上述の通りスマホとイヤホンやヘッドホンの間の通信状態が良好な場合は良い品質で音楽を再生し、良好でないときは音楽が途切れないことを優先してビットレートを下げていました。
Snapdragon 865ではこのビットレートの上限を640kbpsに引き上げるそうです。これは96kHz/24-bit相当のハイレゾ音源再生に相当するそうです。
日本オーディオ協会の定義では96kHz/24-bitの再生ができて初めてハイレゾ対応だそうなので、これでaptX Adaptiveもハイレゾ対応といえます(定義にはいろいろありますが。。。)。
他社のハイレゾ対応Bluetoothコーデックにスペックで追いつく
ハイレゾ対応のBluetoothコーデックは他にソニーのLDACとHuaweiのHWAがあります。それらはどちらも96kHz/24-bit相当であったため、aptX Adaptiveもようやくこれでそれらにスペック上追いつくことになります。
また、LDACとHWAはビットレートが可変ではあるもののユーザーによる手動選択です。aptX Adaptiveは自動的に変化させるため、その意味ではLDACとHWAよりもモバイル機器としては使いやすいコーデックとも言えます。
ちなみに、最高ビットレートはLDACとHWAは900kbpsです。ビットレートですべてが決まるわけではないですが、最高ビットレートの点ではaptX Adaptiveはまだ劣ってはいます。
aptX Adaptive対応イヤホンはすでに発売されている
Qualcommとしては今後はスマホメーカーやイヤホンメーカーにaptX Adaptiveの採用を促していき、ゆくゆくは統一していきたいようです。
すでにaptX Adaptive対応のイヤホンも発売されています。たとえば、Bowers & Wilkins (B&W)のPX7がそれです:
また、スマホはSnapdragon 855およびSnapdragon 865では対応しており、たとえばシャープのAQUOS R3で対応しています。
まだまだイヤホン/ヘッドホンもスマホもハイエンドの機器しか対応していませんが、今後は広がりを見せていくことでしょう。
Bluetoothは音が悪いという時代は終わりを迎えるか
いまだにBluetoothといえば音が悪いといわれるのは初期のBluetooth機器のせいかと思います。
今では街を歩いていても完全ワイヤレスイヤホンを使っている人が多くいて、Bluetoothイヤホン自体は市民権を得ている感があります。
さらにこのaptX Adaptiveのような規格が普及すれば音質差についてとやかく言う人は減り、スマホにイヤホンジャックがないのが当たり前になっていきそうです。
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