廉価なのに高音質なオーディオを手掛けているFX-AUDIOから新たな製品がリリースされるようです。今回はパラレルBTL構成のステレオパワーアンプというとんがった構成です。それでいてお値段は6980円とリーズナブル。
TIのTPA3116を2個搭載
このFX1001Jx2、”x2″とついているだけあり内部にアンプを2つ搭載しています。
TI(Texas Instruments)のD級アンプICであるTPA3116を二個搭載することによってデュアルモノ構成のステレオアンプを1台で実現しています。2つのICをどちらもパラレルBTL(PBTL)設定で使っています。
FX-AUDIOのPBTLアンプというとなんか記憶にあると思ったら、FX1001Jがそれでした。
こちらはモノラルパワーアンプになっており、”x2″がつかない通り、TPA3116を1台のみ搭載しています。
また、ICがTPA3118になったFX501Jもあり、こちらもモノラルアンプです。
また、FX501JをステレオアンプにしたFX501Jx2も存在します。
ちなみに、FX1001JはFX501Jの高出力モデルだそうです。
パラレルBTL(PBL)アンプとは?
このように盛んにアピールされているパラレルBTL(Parallel BTL, PBTL)アンプとは何のことでしょうか?
2つのアンプを逆位相で駆動させるBTL(Bridged-tied load)方式
まずは、BTL方式とはどんな方式なのかについて。
上の回路図がBTL構成のアンプです。通常のアンプではA1とA2のいずれかしかなく、片方の入力はInputに、もう一方はグランド(電位が0のところ)に接続されます。
これに対して、BTLの場合は2つのアンプを用意し、一方には+入力、もう一方には-入力にInputをつなげます。もう一方はグランドに接続します。
こうすることにより、
- 電源の問題で揺れてしまうグランドの影響を排除することができる
- DC成分を排除するためのキャパシタが不要になり音の低音成分が減衰されない
というメリットがあります。
デジタルアンプは電源の良しあしに音質が影響されやすいため、電源の問題を排除できるところはメリットです。
ダンピングファクターが半分になってしまうBTL方式
BTL方式は良いことばかりではありません。
一番の問題はスピーカーの駆動力を示すダンピングファクターが半分になってしまう点です。
ダンピングファクターが下がると特に低音の制動力に影響が出て、ぼやっとした切れのない低音が出ます。
クラスDアンプICの内部ではBTL構成になっている
あまり知られていませが、クラスDアンプICの内部ではすでにBTL構成になっていることが多いです。
下の図はTPA3116の内部機能ブロック図の方チャネル分なのですが、赤で囲った部分がBTL構成になっているのがわかるかと思います。
なので、実は何もしなくてもD級アンプはBTL構成だったりします。
パラレル駆動方式を組み合わせてダンピングファクターの問題を解決
そこで、BTL方式にパラレル駆動方式を組み合わせることでダンピングファクターの問題を解決します。
パラレル駆動方式というとたいそうなものに聞こえますが、要は2つのアンプに同じ入力を入れ、その出力を1つのスピーカーにつなげた方式です:
上は単純なBTL方式ですが、それぞれのA1, A2がパラレル方式になったものがパラレルBTL(PBTL)方式です。
これから流行りだすパラレルBTL方式?
このように、アンプが倍になるのでコストも上がるパラレルBTL方式ですが、ダンピングファクターを倍にできることで高級な駆動しづらいスピーカーを駆動させられることから、D級アンプでは流行りつつあります。
最近ではマランツのM-CR612がパラレルBTL駆動です。
また、デノンのPMA-150HもパラレルBTL方式となっています。
FX-AUDIOではFX501JやFX100Jx2を2台用意することですでにパラレルBTLのステレオアンプが実現できていましたが、FX1001Jx2は1台で済むので、コストや設置場所の点では有利です。
価格でいうと、
- FX501J: 4980円
- FX501Jx2: 6480円
- FX1001J: 5480円
- FX1001Jx2: 6980円
となっており、ステレオアンプになっているx2モデルはモノラルアンプ+1500円となっているようです。ステレオ構成だとx2の方が3000~40000円ほど安くなります。また、別売りになっているACアダプタも1つで済むのでトータルコストではもう少し安くなります。
純粋なパワーアンプであるところに注意
FX1001Jx2の注意点は、純粋なパワーアンプである点です。
写真を見ると、ボリュームノブが無段階ではなく限られたところにしか動かないことがわかるかと思います。これはゲイン調整でいくつかの段階でボリュームを調整する機能しかなく細かいボリューム調整ができません。
このため、ボリューム調整は再生側の機器か、間にラインアンプを入れる必要があります。
ラインアンプという意味ではFX-AUDIOは真空管を使ったラインアンプを発売しており、これを入れるのが良いかもしれません。
FX-AUDIOの真空管ラインアンプは私も使っていましたが、効果は抜群でした:
魅力的なパラレルBTL駆動方式を1台で安価で実現
これまでパラレルBTL駆動というと高級なオーディオにしか搭載されない印象がありました。
それが、クラスDアンプICによって安価に実現できるようになり、一般のオーディオファンもその実力を享受できるようになっています。
今回のFX1001Jx2も音質には定評のあるFX-AUDIOなのでなかなか期待できる製品ではないでしょうか。
価格は6980円とアンプを二つ載せてるにしてはリーズナブルです。501Jを選ぶか1001Jを選ぶかは、パワーをどれだけ必要とするかによりますが、どちらでも普通の広さの部屋なら十分ではないかとは思います。
コメント
「それぞれのA1, A2がBTL方式になったものがパラレルBTL(PBTL)方式です。」これは間違っています。A1、A2がそれぞれ2台の並列アンプで駆動されています。
Junichi Murakamiさん
コメントありがとうございます。
確かに逆ですね。図自体がBTLなので、これをパラレルにしたものがパラレルBTLですね。
ご指摘ありがとうございました。